事業用不動産の消費税「基本のき」|貸す・借りる・売る・買うときの判断基準
2025/11/29
工場や倉庫、店舗などの事業用不動産を「貸す・借りる・売る・買う」とき、必ずついて回るのが消費税です。
「家賃に消費税はかかるの?」
「土地代にはかからないって本当?」
「インボイスに登録していない貸主の場合は?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実は、不動産の消費税は「たった3つのルール」さえ押さえておけば、大半のケースで迷わなくなります。
この記事では、事業用不動産取引における消費税の取扱いについて解説します。

まずはこれだけ!消費税の「3つのシンプルルール」
個別の物件を見る前に、一番大切な「判断のものさし」を持っておきましょう。
国税庁のルールをすごく簡単にすると、こうなります。
人が住むための建物:消費税がかからない
事業に使う建物:消費財がかかる
土地(地面):消費税がかからない
基本はこれだけです。
この「住むか・事業か」「建物か・土地か」という軸を持って、それぞれの物件を見ていきましょう。
【賃貸編】物件種目ごとの判定
「貸す・借りる」場合の賃料について、物件タイプ別に見ていきます。
貸工場・貸倉庫の賃料|もれなく「課税」
判定:消費税がかかる
工場や倉庫は、「住むため」のものではなく、100%「事業(ビジネス)のため」の建物です。
そのため、個人オーナー・法人オーナー問わず、賃料には消費税がかかります。
ポイント:土地付きの一棟貸し工場であっても、建物が含まれる契約であれば、賃料総額に対して消費税がかかるのが原則です。
貸店舗・貸事務所(オフィス)|やはり「課税」
判定:消費税がかかる
お店やオフィスも「事業を行う場所」ですので、賃料は課税対象です。
マンションの1階に入っている店舗などでも、そこが「店舗契約」であれば消費税がかかります。
ポイント:契約書に「共益費」「管理費」が含まれる場合、これらも「場所を借りる対価」の一部とみなされ、消費税がかかります。
貸寮(社宅)|「使い方」で変わるグレーゾーン
判定:住むなら「非課税」、事業的なら「課税」
貸寮は少し注意が必要です。
「どう使われているか」で判断が分かれます。
社員が生活の拠点として住む(一般的な社宅・寮)
→消費税はかかりません(住宅扱い)
事業用として使う(例:一部を研修室や事務所にしている)
→消費税がかかります
ホテルや民泊のように短期で貸す(1か月未満の利用など)
→消費税がかかります(住宅とはみなされません)
ポイント:契約書が「居宅(住まい)」となっていても、実態がビジネスホテルに近い場合は課税される可能性があります。
貸地(土地のみ)|基本は「非課税」だが例外あり
判定:原則「非課税」。ただし「設備」があると「課税」
ここが一番の落とし穴です。
「土地を貸すだけなら非課税」が原則ですが、「更地(さらち)」か「整備済み」かで扱いが変わります。
A. 何もない土地を貸す(資材置き場など)
消費税はかかりません。
単に「地面」を貸しているだけだからです。
B. 駐車場として整備して貸す(アスファルト・フェンス等)
消費税がかかります。
これは「土地」ではなく「駐車場の設備(施設)」を貸しているとみなされるためです。
C. 1か月未満の一時的な貸し出し(イベント会場など)
消費税がかかります。
土地の貸付であっても、短期の利用は非課税になりません。
| 物件種目 | 主な用途 | 消費税の扱い | 補足ポイント |
|---|---|---|---|
| 貸工場 | 事業用建物 | 課税対象 | 賃料・共益費などは基本的に課税 |
| 貸倉庫 | 事業用建物 | 課税対象 | 物流・保管など事業用として賃貸 |
| 貸店舗 | 事業用建物 | 課税対象 | 飲食・物販・サービスなど店舗利用 |
| 貸事務所(オフィス) | 事業用建物 | 課税対象 | 事務所・バックオフィスなど |
| 貸寮(居住用途) | 住宅として居住 | 非課税 | 社員が住むための寮など、住宅として継続利用 |
| 貸寮(一部事業用途) | 事務所・研修室等を併用 | 一部または全部が課税になる可能性 | 実際の使い方・契約内容により判断 |
| 貸地(長期・土地のみ) | 土地の貸付け | 非課税 | ふつうの借地・地代は原則非課税 |
| 貸地(1か月未満の一時貸し) | イベント用地など | 課税対象 | 「一時的に貸す」場合は非課税とならない |
| 駐車場としての貸地 | 駐車場施設の利用 | 課税対象 | アスファルト舗装・ライン・ゲート等がある駐車場 |
【売買編】物件種目ごとの判定
次に「売る・買う」場合の価格について、物件タイプ別に見ていきます。
ここでも「土地は非課税、建物は課税」というルールを当てはめるだけです。
工場・倉庫・ビルを売る場合
建物と土地がセットになっていることがほとんどですが、この場合は価格を分けて考えます。
土地の代金 → 消費税はかからない
建物の代金 → 消費税がかかる
契約書では、土地と建物の価格内訳が記載されているはずです。
消費税は「建物価格」に対してのみ計算されます。
更地(事業用地)を売る場合
土地の代金 → 消費税はかからない
建物がない土地だけの売買であれば、金額が大きくても消費税は0円です。
ただし、不動産会社に支払う「仲介手数料」は、役務提供(サービス)なので消費税がかかります。
ここを混同しないようにしましょう。
| 物件種目 | 対象部分 | 消費税の扱い | 補足ポイント |
|---|---|---|---|
| 売工場 | 建物部分 | 課税対象 | 土地部分は非課税 |
| 土地部分 | 非課税 | ||
| 売倉庫 | 建物部分 | 課税対象 | 土地部分は非課税 |
| 土地部分 | 非課税 | ||
| 売店舗・売事務所 | 建物部分 | 課税対象 | 区分所有でも建物相当部分は課税 |
| 土地部分 | 非課税 | ||
| 売ビル(店舗ビル等) | 建物部分 | 課税対象 | 一棟ビルも考え方は同じ |
| 土地部分 | 非課税 | ||
| 売事業用地 | 土地(更地) | 非課税 | 事業用に使う前の「土地そのもの」の売買 |
よくある誤解:「インボイス未登録=非課税」ではありません
最後に、インボイス制度が始まってから増えた誤解を解いておきましょう。
誤解
「貸主(売主)がインボイス登録していないから、消費税は払わなくていいですよね?」
これは間違いです。
消費税がかかるかどうか(課税・非課税)を決めるのは、あくまで「何の取引か(店舗か住宅か、土地か建物か)」です。
貸主がインボイス登録をしているかどうかで、取引の性質(課税・非課税)が変わることはありません。
課税・非課税
→ 物件の種類で決まる(工場なら課税、住宅なら非課税)。
インボイス制度
→ 借り手(買い手)が、払った消費税を国に申告する際に「控除(経費扱い)」できるかどうかの話。
ですので、貸主が免税事業者(インボイス未登録)であっても、工場の家賃であれば消費税相当額を請求されることは法的に問題ありません。
まとめ
事業用不動産の消費税で迷ったら、まずはこの3つを思い出してください。
1. 「建物」か「土地」か?(土地なら原則かからない)
2. 「事業用」か「住宅用」か?(住宅ならかからない)
3. 「設備」があるか?(整備された駐車場は施設扱いでかかる)
これらを整理するだけで、複雑そうに見える消費税の判断がかなりクリアになるはずです。
ただし、契約内容の特約や、貸付期間(1か月未満かどうか)などによって判断が変わるケースもあります。
「金額が大きい取引」や「用途が混在するケース」では、自己判断せずに税理士などの専門家へ確認することをおすすめします。
宅地建物取引業 国土交通大臣免許(3)8600号
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