事業用不動産の査定で「思ったより高い・安い」理由をわかりやすく解説
2026/01/16
事業用不動産(工場・倉庫・店舗・事務所・事業用地など)の査定では、売主様・貸主様が「だいたいこのくらいかな?」と予想していた金額から、良くも悪くも大きくズレることが珍しくありません。
本記事では、査定でよく起こる 「思ったより良かった!」(想定より高い) と 「思ったより悪かった!」(想定より安い) の要因を、専門知識がなくてもスムーズに理解できるよう整理し、役立つ対策までわかりやすく解説します。

目次
そもそも査定価格は「何で決まる」の?
査定価格は、大きく分けると以下の5つのポイントのバランスで決まります。
- 立地(どこにあるか):駅からの距離や、高速道路のICへの近さ。
- 需要(借りたい・買いたい人がいるか):今、その場所を欲しがっている企業が多いか。
- 建物の状態(古さ・修繕状況):そのまま使えるか、直さなければ使えないか。
- 法令(建物のルール):どんな種類の建物が建てられる場所か(用途地域など)。
- 流通性(売りやすい・貸しやすいか):万人受けする使い勝手の良さがあるか。
つまり、「場所が便利」「使い道が広い」「将来の不安が少ない」物件ほど評価が高くなり、逆に「使い手が限られる」「修繕コストがかさむ」物件は、評価が下がりやすいのが基本です。
事業用不動産の査定が“想定とズレる”理由
事業用不動産が一般的な住まいと大きく違うのは、「使う人のビジネスにどれだけ役立つか」で価値が決まる点です。
- 同じ場所でも、「工場として使いたい人」と「店舗として使いたい人」で求める条件が違う
- 建物の設備(天井の高さ、床の強さ、電気の容量など)が、特定の業種にとって「お宝」になることがある
- 法律の制限や過去の契約内容など、目に見えないチェック項目が査定に大きく響く
そのため、「見た目がきれいだから高い」「古いから安い」といった単純な見た目だけでは判断できないのが、事業用査定の奥深さでもあります。
「思ったより良かった!」になりやすい要素
まずは、査定額が予想を上回りやすい「プラス査定」のポイントを見ていきましょう。
需要が強いエリア・アクセス良好
事業用不動産は、「ビジネスの効率」が価格に直結します。
- 大型トラックが無理なく通れる広い道路に面している
- 高速道路のインターチェンジや幹線道路へのアクセスが抜群
- 近くに似た業種の工場や物流拠点があり、ビジネスの相乗効果が見込める
こうした「代わりがきかない好条件」があると、周辺相場よりも強気の査定が出る傾向にあります。
土地の形が使いやすい
面積が同じでも、「いかに効率よく建物や駐車場を配置できるか」で評価が変わります。
- 四角い整った形で、大型車の切り返しができるスペースがある
- 間口(道路に接している幅)が広く、出入り口を複数作れる
- 土地の中に無駄なデッドスペースが少ない
事業用では「使いやすさ=稼げる力」とみなされるため、機能的な土地は高く評価されます。
建物のメンテナンスが良い
たとえ築年数が経っていても、大切に使われてきた建物はプラス評価になります。
- 屋根や外壁の塗装を定期的に行い、雨漏りを防いでいる
- 床のひび割れや建具のガタつきが少なく、清潔感がある
- 受変電設備(キュービクル)などの重要設備がしっかり更新されている
「購入後、すぐにお金をかけずに使い始められる」という安心感は、価格を押し上げる大きな武器になります。
図面・資料がしっかり揃っている
実は、これが最も大きな差を生むこともあります。
- 建築確認済証・検査済証(法律を守って建てた証明書)
- 設計図面や過去の修繕記録
- 土壌汚染の調査報告書やアスベストの検査結果
「この物件は安全・安心です」という証拠が揃っていると、買う側・借りる側はリスクを恐れずに判断できるため、スムーズに高い評価へとつながります。
「思ったより悪かった…」になりやすい要素
続いて、査定額が想定よりも低く出てしまいがちな「マイナス査定」の要因を見ていきましょう。
これらは、あとから「知らなかった!」とならないための大切なチェックポイントです。
法令制限や用途のミスマッチ
「ここで工場を始めたい」「倉庫として使いたい」という希望があっても、法律や地域のルール(用途地域など)によって制限される場合があります。
- その場所では、希望する業種が許可されない
- 建物の大きさや高さに厳しい制限があり、建て替えの自由度が低い
- 用途変更や増改築の手続きに、多額の費用や時間がかかる
このように「ビジネスの自由度が低い」と判断されると、借り手や買い手が限られてしまうため、評価が下がりやすくなります。
再建築・増改築が難しい条件がある
事業用不動産では、今の建物だけでなく「将来どうできるか」も厳しくチェックされます。
- 接している道路が狭く、今の法律では同じ規模の建物が建てられない(再建築不可など)
- 隣地との境界がはっきりしておらず、トラブルのリスクがある
- 建物が古すぎて、大がかりな補強をしないと再利用が難しい
こうした「将来の選択肢が狭まってしまう」物件は、どうしても慎重な査定(低めの金額)になりがちです。
建物や設備の不具合がある
一見きれいに見えても、実用面でのダメージは大きく響きます。
- 屋根からの雨漏りや、壁の大きなひび割れ
- 水道・排水管の詰まりや腐食
- シャッターやエレベーターなどの昇降設備の故障
- 空調や電気容量が不足しており、今のビジネス基準に合わない
これらは修理すれば直るものも多いですが、「手に入れた直後に大きな出費が必要になる」という点は、査定額を押し下げる要因になります。
匂い・騒音・近隣環境の影響
事業活動をする上で「周囲とトラブルなく運営できるか」は非常に重要です。
- 周辺道路が狭く、大型トラックの出入りが近隣の迷惑になりやすい
- すぐ隣が閑静な住宅地で、夜間の稼働や音、振動にとても気をつかう
- 排気や匂いが出やすい業種に対して、周辺の理解が得にくい
スムーズな運営が難しいと予想される立地は、どうしても「使いにくい物件」として評価が下がってしまいます。
空室期間が長くなりそう
査定では「次に使う人がすぐに見つかるか」という人気度も加味されます。
- 似たような条件の空き物件が周辺にたくさんある
- 面積が広すぎたり、逆に狭すぎたりして、使い道が中途半端
- 設定したい賃料が、今の相場に比べて高すぎる
こうした「次の入居者が決まりにくいリスク」が高いと判断されると、収益性が低いとみなされ、査定価格に影響します。
現行法との比較、遵法性
「昔はこれで大丈夫だった」という建物でも、現在の法律(建築基準法や消防法など)に照らし合わせると、今のルールを満たしていない場合があります。
- 建てた当時よりも法律が厳しくなり、今の基準では「既存不適格」となっている
- 無届けで増築や改築をしてしまい、完了検査を受けていない(違反建築の状態)
- 消防設備(スプリンクラーや避難階段など)が、今の基準に追いついていない
近年、コンプライアンス(法令遵守)への意識が非常に高まっているため、「今のルールをクリアしていない物件」は銀行の融資が通りにくくなります。
その結果、買える人が限られてしまい、査定価格に大きく響くことがあるのです。
借主の意識も高まっています。
まとめ:事業用不動産の査定は「使える価値」と「不安の少なさ」で決まる
事業用不動産の査定で「思ったより…」が起きるのは珍しくありません。
- 良かった!:需要に合う立地・スペック・安定収益・希少性がある
- 悪かった…:法令や修繕リスク、使いにくさ、資料不足が足を引っ張る
ポイントは、物件の“長所”を市場に伝えやすくし、“不安”を先回りして整理することです。
査定額だけで一喜一憂せず、「なぜその評価なのか」を理解し、売却・賃貸の戦略に落とし込むことで、納得感のある取引につながります。
宅地建物取引業 国土交通大臣免許(3)8600号
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