【敷金のきほん】戻ってくる条件と民法改正のポイント
2026/05/01
賃貸借契約を結ぶときに、よく出てくる費用のひとつが「敷金」です。
敷金は、借主が貸主へ支払うお金ですが、礼金や仲介手数料とは性質が異なります。
簡単にいうと、敷金は家賃の滞納や退去時の修繕費などに備えて、貸主に預けておくお金です。
問題がなければ、賃貸借契約の終了後に返還されることが原則です。
2020年4月1日に施行された改正民法では、これまで実務や判例で扱われてきた敷金の考え方が、民法第622条の2として明文化されました。

敷金とは
敷金とは、賃貸借契約において、借主が貸主に預ける金銭のことです。
民法では、敷金について、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生じる借主の金銭債務を担保する目的で、借主が貸主に交付する金銭と定められています。
わかりやすく言えば、次のような場合に備えるためのお金です。
■家賃の未払いがあった場合
■借主の不注意で建物や設備を壊した場合
■退去時に借主が負担すべき原状回復費用がある場合
つまり、敷金は「貸主が万一に備えて預かる保証金のようなお金」と考えるとわかりやすいでしょう。
敷金と礼金の違い
敷金と混同されやすいものに「礼金」があります。
敷金は、契約終了時に未払賃料や修繕費などを差し引いたうえで、残額が返還される性質のお金です。
一方、礼金は貸主に対して支払う謝礼的な金銭であり、原則として返還されません。
民法改正前の敷金の扱い
民法改正前は、敷金について明確な条文がありませんでした。
そのため、敷金の返還時期や差し引ける費用の範囲は、契約内容や裁判例、実務上の運用をもとに判断されていました。
実務としては広く定着していたものの、法律上の定義が明文化されていなかったため、借主と貸主の間で認識の違いが生じることもありました。
民法改正後に敷金の定義が明確化
2020年4月1日施行の改正民法により、敷金の定義や返還に関するルールが明文化されました。
法務省の資料でも、敷金に関する新たな規定として民法第622条の2が設けられたことが示されています。
改正後のポイントは、主に次の3つです。
■敷金の定義が明確になった
敷金は、賃料などの借主の金銭債務を担保するために、借主が貸主へ預ける金銭であることが明確になりました。
これにより、「敷金」「保証金」など名称が異なる場合でも、実質的に同じ目的で預けられた金銭であれば、敷金として扱われる可能性があります。
■返還時期が明確になった
民法第622条の2では、貸主は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、敷金から借主の債務を差し引いた残額を返還しなければならないとされています。
つまり、敷金は「契約が終わっただけ」で直ちに返還されるのではなく、建物や部屋を明け渡した後に精算されるのが基本です。
■借主から一方的に敷金充当を求めることはできない
借主に未払賃料などがある場合、貸主は敷金をその支払いに充てることができます。
ただし、借主の側から「今月の家賃は敷金から差し引いてください」と一方的に求めることはできません。
敷金は、あくまで貸主が債務不履行などに備えて預かる金銭であり、借主が自由に使える前払い家賃ではない点に注意が必要です。
契約トラブルを防ぐため
敷金の定義があいまいなままだと、退去時にトラブルが起きやすくなります。
たとえば、次のような点は契約前に確認しておくべきです。
■敷金か、保証金か
■償却や敷引きの有無
■返還時期
■原状回復費用の負担範囲
■未払賃料がある場合の充当方法
■事業用物件の場合の特別な原状回復義務
敷金で注意したいポイント
敷金は、単に「戻ってくるお金」と考えるだけでは不十分です。
契約内容によっては、一定額を返還しない「償却」や「敷引き」が定められている場合があります。
また、事業用不動産では、退去時に内装・設備・造作の撤去、床や壁の補修、スケルトン返しなどが必要になるケースもあります。
そのため、契約時には金額だけでなく、敷金の性質や精算方法まで確認することが大切です。
まとめ
敷金とは、賃貸借契約において、借主の未払賃料や原状回復費用などに備えて、貸主に預ける金銭です。
民法改正により、敷金の定義や返還時期が明文化され、これまで実務や判例に基づいて扱われていたルールが、よりわかりやすく整理されました。
ただし、敷金の扱いは契約内容によって異なる場合があります。
特に事業用物件では、住宅よりも原状回復の範囲が広くなることもあるため、契約前に敷金・保証金・償却・原状回復の内容をしっかり確認することが重要です。
敷金は、借主と貸主の双方にとって大切な契約条件です。
正しく理解しておくことで、契約時や退去時のトラブルを防ぎ、安心して賃貸借契約を進めることができます。
宅地建物取引業 国土交通大臣免許(3)8600号
◆この記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、立和コーポレーションの見解を示すものではありません。
◆この記事に掲載の情報の正確性・完全性については、執筆者および立和コーポレーションが保証するものではありません。
◆この記事に掲載の情報は、執筆時点のもので、最新の情報ではない可能性があります。
◆この記事に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、執筆者および立和コーポレーションは一切責任を負いません。
あらかじめご了承ください。


前の記事




