不動産取引における「境界」について
2023/12/13
不動産取引において、「境界(「きょうかい」と読みます。)」という言葉は頻繁に使用され、重要な意味をもちます。
一般的に多く使用される意味は、隣接する土地との境目(隣地境界)、隣接する道路との境目(道路境界)です。
不動産売買契約書では「境界の明示」という言葉がよく使用され、重要事項説明書の添付資料では「境界確認書」「境界確定図」「道路境界確定図」など境界に関する書類が多く添付されます。賃貸取引においても、道路境界を明確にし、接する道路の幅員を明確にする必要がある場合が多くあります。
境界確認書とは、隣地との土地の境界をはっきりさせるために測量(境界確定測量)を行い、双方合意のもと境界線を明確に記載した証明書のことです。
境界標を設置し、図面(境界確定図)等と共に証明書として作成されます。
その他に、道路との境界確認は「道路境界確定図」、水路との境界確認は「水路境界確定図」、道路・水路との境界確認は「道水路境界確定図」があります。
今回の記事では、この不動産取引における「境界」について、簡単な内容になりますが、まとめてみたいと思います。
「土地の境界」とは?
土地の境界には『公法上の境界(筆界(「ひっかい」と読みます。))』と『私法上の境界(所有権界)』の2種類があります。
公法上の境界(筆界)
筆(土地登記簿の土地の個数の単位で、地番を付されて区画されたもの)を異にして隣接する土地の境目です。
関係当事者の合意によって決めることはできません。
私法上の境界(所有権界)
土地の所有権の範囲の問題であり、隣接する土地の所有権の境目を意味します。
当事者間の合意によって決めることができます。
長い年月の経過などで、筆界がわからなくなってしまう場合があります。
この場合、現在占有している境界が筆界とは限りません。
また、隣地所有者とお互いにブロック塀や構造物があるところが境界と認識していても、実際は筆界でないことがあります。
境界標を設置しよう!
境界があいまいだと、隣地所有者との認識の違いを生み出してしまいます。
このあいまいさを払拭するためには、隣地所有者と協力し合って永続性のある境界標を設置することが重要です。
土地の境界は、土地所有者自身が管理するものになります。
また、最新の測量技術で将来に残る文書を作成しておくことで、土地の価値を守ることにつながります。
土地の境界標とは、一筆の土地の境の屈曲点に設置された標識のことで、その土地の所有者が、排他的に使用することができる範囲を、客観的に定めたものです。
境界標の種類には一般的に、「コンクリート杭」「石杭」「金属標」「プラスチック杭」「金属鋲」「木杭」などがあります。
越境リスクはできるだけ解消しよう!
不動産取引において、割と多いリスクに「越境(「えっきょう」と読みます。)」があります。
「越境」とは、所有物が隣地に侵入していることをいいますが、売買取引・賃貸取引共に後の問題の原因となるリスクがあります。また、不動産の価値を下げる原因にもつながる可能性があります。
目視で分かる「越境物」はできるだけ早く解消することをおすすめします。
「被越境物」について、すぐの解消が難しい場合には、隣地所有者と「覚書」を締結することもリスク回避方法の一つです。
越境物の覚書は、土地の境界や所有権について、トラブルを防ぐために取り交わす必要があります。
覚書に記載する主な内容について
1.越境物の事実確認
境界線を越えた越境物が存在することを確認していることを記載します。
2.現状使用の承認
越境物を現状のまま使用することを承認することを記載します。
3.越境物の撤去条件
例として
「将来的に建て替えや改築などを行う際は、自己の責任と費用負担によって越境物を撤去すること」
「撤去後に越境部分の土地の所有権を主張しないこと」など
4.覚書の継承義務
土地売買や譲渡などによって土地の所有者が変わる場合を想定して、作成した覚書の権利・義務を新たな所有者に継承することを記載しておく必要があります。
土地測量や土地を掘るなどをしてはじめて「越境物」が分かる場合もあります。
よく見受けられるケースは、樹木の枝葉や草、エアコンの室外機、電線、フェンス・塀、庇、水道管・配水管などの地中埋設管などです。
境界の明示(「めいじ」と読みます。)とは
土地売買取引において、売買契約書(公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 雛形)に「境界の明示」という項目があります。
第4条 売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、隣地との境界を現地において明示する。
こちらは、土地売買契約締結後、残代金支払い日までに、売主が買主に対して現地で境界標を指示して隣地との境界を明示することを定めた条項になります。
土地売買取引において、売主は買主に対して土地の境界を明示することが義務付けられています。
これを「境界明示義務」といい、土地売買取引では非常に重要とされています。
境界標やブロック塀、金属プレートなどを使って土地の範囲を明確に示す必要があります。
前回境界を確定させた際に使用した境界標が残っていれば良いですが、長い年月の経過でなくなっているようなことがあれば、隣地所有者に立ち会ってもらい、再度復旧が必要です。
まとめ
不動産取引において、境界標の重要性を理解しましょう。
土地は大切な財産であり、その管理は境界標から始まります。境界標があれば、境界点や境界線を把握でき、土地の管理が円滑に行えます。
また、境界がはっきりしていれば、所有者ご自身の土地だけでなく、隣接する他人の土地に対する権利や義務も明確になり、あいまいさからくる問題が予防されます。
多くの境界問題は、境界標が存在しないことが原因となっています。
境界標は登記や測量においても不可欠な資料です。所有権界を正式な境界として反映させるには、分筆登記と所有権移転登記が必要となります。
宅地建物取引業 国土交通大臣免許(2)8600号
◆この記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、立和コーポレーションの見解を示すものではありません。
◆この記事に掲載の情報の正確性・完全性については、執筆者および立和コーポレーションが保証するものではありません。
◆この記事に掲載の情報は、執筆時点のもので、最新の情報ではない可能性があります。
◆この記事に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、執筆者および立和コーポレーションは一切責任を負いません。
あらかじめご了承ください。