盛土規制法 | 2023年5月26日施工 | 宅造法から抜本的に見直し
2023/08/17
盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)が2023年5月26日に施工されました。
従来の宅地造成等規制法(以下、「宅造法」といいます。)を抜本的に見直し、危険な盛土・切土などを全国一律の基準で包括的に規制するのが主要な目的です。
規制の対象となるエリアや行為、違反した場合の罰則などはこれまで以上に厳しくなります。
これまでは、盛土行為を一律に規制することはできておらず、各法律の網目を抜けた規制が不十分なエリアが存在していました。
土地の開発を規制する法律には、宅造法ほか、森林法、農地法などがあるが、各法律は、宅地の安全確保、森林機能の確保、農地の保全という具合に目的が異なります。
宅造法では、都道府県の知事や指定都市・中核市の長(以下、「知事等」といいます。)が規制区域を指定し、その規制区域内で宅地の造成工事を行なう場合に許可を義務付けている。
まだ記憶に新しい、2021年7月、静岡県熱海市で不適切な造成による盛土が大雨で崩落し、大規模な土石流災害が発生しました。
大量の土砂が住宅地に襲いかかり、家々を崩壊し、多くの人命が失われました。
このエリアも宅造法の規制対象外でした。
そのため、土地の利用区分にかかわらず、人家に被害を及ぼす可能性がある危険な盛土を取り締まるルールが早急に求められました。
盛土規制法の第一テーマは「スキマのない規制」
規制区域
・宅地造成等工事規制区域(宅造区域)
市街地や集落など、人家等がまとまって存在し、盛土・切土がされれば人家等に危害を及ぼしうるエリア
・特定盛土等規制区域(特盛区域)
市街地や集落等からは離れているものの、地形等の条件から盛土・切土がされれば人家等に危害を及ぼしうるエリア
規制対象
これまでの宅造法の規制対象は、「宅地を造成するための盛土・切土」でしたが、規制される行為も増えます。
・用途を宅地造成に限定せず、「土地(森林・農地を含みます。)を造成するための盛土・切土」を規制対象にします。
・土地の形質の変更には該当しない「単なる土捨て行為や一時的な堆積」も規制対象に加えられました。
宅造区域や特盛区域で規制対象の行為を行なうためには、知事等の許可が必要となります。
また、特盛区域には知事等への「届出」が必要な行為もあります。
・宅造区域における「許可」が必要な行為(白抜きは新たに追加された行為)
土地の形質の変更(盛土・切土)
① 盛土で高さ1m超の崖
② 切土で高さ2m超の崖
③ 盛土と切土を同時に行ない、高さ2m超の崖(①②を除く)
❹ 盛土で高さ2m超(①③を除く)
⑤ 盛土または切土をする土地の面積が500㎡超(①~❹を除く)
一時的な土石の堆積
❻ 堆積の高さ2m超かつ面積300㎡超
❼ 堆積の面積500㎡超
・特盛区域における「許可」が必要な行為(白抜きは新たに追加された行為)
土地の形質の変更(盛土・切土)
❶ 盛土で高さ2m超の崖
❷ 切土で高さ5m超の崖
❸ 盛土と切土を同時に行ない、高さ5m超の崖(❶❷を除く)
❹ 盛土で高さ5m超(❶❸を除く)
❺ 盛土または切土をする土地の面積が3,000㎡超(❶~❹を除く)
一時的な土石の堆積
❻ 堆積の高さ5m超かつ面積1,500㎡超
❼ 堆積の面積3,000㎡超
盛土の安全性確保
盛土規制法では、盛土・切土を行なうエリア地形や地質に応じて、災害防止のために必要な安全基準(許可基準)を設定しています。
・盛土切土
① 擁壁の設置
② 排水施設の設置
③ 盛土の締め固め など
・一時的な堆積
① 地盤の勾配
② 堆積の高さ
③ 境界柵までの空き地の確保
盛土・切土の責任の所在が明確化になります。
土地の所有者のほか、管理者、占有者等は、盛土・切土が行われた土地に対して、常時安全な状態を維持する責務を負うことになります。
災害防止のために必要な場合は、盛土・切土を行なった造成者や工事施工者、過去の土地所有者に対しても、知事等から是正措置命令が出されます。
無許可や安全基準違反・命令違反の盛土・切土への罰則も厳しくなっています。
宅地建物取引業 国土交通大臣免許(2)8600号
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