「特別工業地区」についてと、東京都の各市区町村の制限概要
2020/07/21
貸工場や売工場、工場用地など、工場系の物件種目をお探しする際のチェック項目として、
「お客様ご自身のご利用方法がどういった区域でできるのか?」
「検討している区域でお客様ご自身のご利用方法ができるのか?」
確認することがたいせつです。
以前別記事でも書きましたが、区域の制限を定めた「都市計画法」があります。
この「都市計画法」ですべての区域の制限が確認できるわけではありませんが、貸工場や売工場、工場用地をさがしはじめの段階では、まず確認したい法律です。
その以前の記事より、「都市計画法」からの区域の制限の確認内容をおおまかにまとめてみます。※詳しくはこちら
「都市計画区域内」>「線引き都市計画区域内」>「市街化区域」
「市街化区域内」には13種類の用途地域があり、その用途地域毎に用途制限が定められています。
行政への事前相談は必要ですが、おおよそ利用方法の可否が判断できます。
ちなみに、この「市街化区域」以外は、市街化を推進していませんので、個別に行政判断が基本となります。
例えば…
「今検討している物件の用途地域は「準工業地域」だから、おおよそ印刷工場はできるな!」
「用途地域の制限内の原動機を使用する作業場の床面積だから、おおよそできるな!」などなど…
ここまでで、利用方法による区域制限により大半の地域が絞り込めるのですが、さらに注意するべき制限はまだまだあります。
各地方公共団体が定める、条例や特別用途地区、地区計画などです。
今回の記事のタイトルになっている「特別工業地区」は特別用途地区の一つになります。
貸工場や売工場、工場用地など、工場系の物件種目をお探しする際には、必ずチェックが必要です。
また、東京都については「東京都特別工業地区建築条例」が平成16年4月1日に廃止されたことにともない、各市区町村において特別工業地区建築条例が制定されました。
規制内容については、ほとんどがこの都条例を踏襲しているため、各市区町村の規制内容についてもそれほど大きな違いはありません。
こちらも簡単にですが後でまとめてみました。
ただし、東京都内すべての市区町村が「特別工業地区」として制定しているわけではありません。
条例や別の特別用途地区名、地区計画などで補完しているケースもあります。
この記事が行政確認のきっかけになれば幸いです。
特別工業地区とは
「都市計画法」で定められている特別用途地区の一つです。
地区の特性や課題に応じて、工場や作業所などの用途にかかわる規制を「強化」または「緩和」を行うために定められます。
地方公共団体の条例で定めることができ、用途地域に重ねて指定されます。
用途地域が定められている一定の地区において、その用途地域の指定を補完して定める地区です。
地区の特性にふさわしい土地利用の増進や環境の保護などの特別の目的の実現を図るために指定されます。
特別用途地区内では、地方公共団体の条例により、建築や用途の制限内容を強化したり、国土交通大臣の承認を得ることにより、用途を緩和したりすることができます。
特別用途地区の種類は、平成10年度の都市計画法の改正により、法令で11種類に限定列挙されていた類型が廃され、用途地域を補完する特別の目的に応じて、地方公共団体が自由に定めることができるようになりました。
【改正前の11種類の類型】
「中高層階住居専用地区」
「商業専用地区」
「特別工業地区」
「文教地区」
「小売店舗地区」
「事務所地区」
「厚生地区」
「観光地区」
「娯楽・レクリエーション地区」
「特別業務地区」
「研究開発地区」
「特別工業地区」には、大きく分けてつぎの2タイプがあります。
中小工場や工場併用住宅と住宅の混在が多い地域に、居住環境の保全や中小規模工場の保護を目的に指定し、建物用途や業種について制限強化しているもの。
水質汚濁、大気汚染、悪臭、爆発などの広域公害の防止を強化しているもの。
制限緩和型
工場と調和しにくい事業(例えば飲食店)の進出を規制したり、工場の建設を容易にするような建築規制の緩和。
用途地域内に、さらに規制の「強化」または「緩和」をする地区があるわけです。
確認する際に気をつけるところは、「特別工業地区」は特別用途地区の一つであること!
この特別用途地区における具体的な制限などについては、各地方公共団体の条例で定められます。
「(基本)特別工業地区の規制内容は、市区町村ごとに異なります!」を念頭に!
次からは、東京都内の各市区町村の条例で定められている「特別工業地区」の規制内容について、それぞれ概略を書きます。
記事日のすこし前に確認した内容になっています。念のため最新の情報をご確認ください。
東京都の各市区町村の特別工業地区の制限概要
最初に説明している「大田区」の引用記事内にある「建築・用途制限強化」の項目Ⅰと「進出用途規制」の項目Ⅱと同様なものがベースに、そのつぎの「足立区など」にある「原動機を使用する工場の床面積制限強化」が追加されているものが主です。
また「都条例」をベースにしている条例が多いので、ある程度似ている条例で市区町村をグループ化して説明します。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり 進出用途規制 など
大田区に関しては、以前記事にしました。
大田区での事業用不動産取引に関連する法律や条例、制度の一部を紹介している記事内に「特別工業地区」について書いています。
参考に引用します。
住宅と工場の調和を図るため、条例により工業の業種、業態の用途規制が設けられています。
大田区特別工業地区建築条例により、つぎの建物が制限されます。
Ⅰ.次に揚げる事業を営む工場
(1)骨炭その他動物質炭の製造
(2)かわら、れんが、土器、陶磁器、人造と石、るつぼ又はほうろう鉄器の製造
(3)ガラスの製造又は砂吹き
(4)スプリングハンマーを使用する金属の鍛造
(5)練炭の製造
(6)木材の引割り又はかんな削りで出力の合計が3.75kwを超える原動機を使用するもの
(7)鉱物、岩石、土砂、コンクリート、アスファルト・コンクリート、硫黄、金属、ガラス、れんが、陶磁器、骨又は貝殻の粉砕で原動機を使用するもの
(8)レディミクストコンクリートの製造
Ⅱ.風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項第1号から第3号までに規定する営業又は同条第11項に規定する特定遊興飲食店営業(客にダンスさせるものに限る。)に該当するもの
参照元:事業用不動産Blog「大田区にて貸工場・貸倉庫を借りる!売工場・売倉庫・工場用地・倉庫用地を買う!法律・条例・制度の一部を紹介」
このように、各地方公共団体の条例により、細かく制限規制や制限緩和が行われています。
大田区については一部抜粋しましたが、以降は簡単な説明となります。
以降、建築・用途制限強化 進出用途規制 は、引用記事内のⅠとⅡと同様の規制ありを意味しています。
より詳細は、各地方公共団体のホームページもしくは担当部署にてご確認ください。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり 進出用途規制 など
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「原動機を使用する工場で、作業場の床面積の合計が300㎡を超えるもの。ただし、作業場を耐火または準耐火建築物とした印刷、製本などの工場については、500㎡を超えるもの」
があります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり 進出用途規制 など
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「原動機を使用する工場で、作業場の床面積の合計が450㎡を超えるもの。ただし、作業場を耐火または準耐火建築物とした印刷、製本などの工場については、500㎡を超えるもの」
があります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり 進出用途規制 など
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「原動機を使用する工場で、作業場の床面積の合計が500㎡を超えるもの。ただし、作業場を耐火または準耐火建築物とした印刷、製本などの工場については、800㎡を超えるもの」
があります。
月島などの一部に第三種特別工業地区を指定しています。
現在のところ、条例は制定されていません。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり 進出用途規制 など
第二種特別工業地区を指定しています。
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「原動機を使用する工場で、作業場の床面積の合計が300㎡を超えるもの。ただし、作業場を耐火または準耐火建築物とした印刷、製本などの工場については、500㎡を超えるもの」
「衛生上有害もしくは騒音・振動のはげしい業種の工場」
があります。
第三種特別工業地区を指定しています。
業種によりますが、作業場の床面積が150㎡以下の場合に建築制限の緩和があります。あわせて、緩和を受ける工場の構造などの制限があります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり 進出用途規制 など
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「原動機を使用する工場で、作業場の床面積の合計が500㎡を超えるもの」(船橋5・6丁目の特別工業地区内は300㎡。ただし、印刷、製本その他これらに類する事業を営むもので、作業場の用途に供する建築物を耐火建築物または準耐火建築物としたものを除く。)
があります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり 進出用途規制 など
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「作業場が耐火または準耐火建築物(木造を除く)以外で、作業の内容について規則で定める基準を満たしていない、原動機を使用する工場」
があります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり
工業地域内に第一種特別工業地区を指定しています。
制限強化対象の事業が詳細に多種にわたってあります。
準工業地域内に第二種特別工業地区を指定しています。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり
工業地域内に第一種特別工業地区を指定しています。
制限強化対象の事業が詳細に多種にわたってあります。
準工業地域内に第二種特別工業地区を指定しています。
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「原動機を使用する工場で、作業場の床面積の合計が1,000㎡を超えるもの」
があります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり 進出用途規制 など
準工業地域内に第二種特別工業地区を指定しています。
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「原動機を使用する工場で、作業場の床面積の合計が300㎡を超えるもの。ただし、作業場を耐火または準耐火建築物とした印刷、製本などの工場については、500㎡を超えるもの」
があります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり
工業地域・工業専用地域に第一種特別工業地区を指定しています。
制限強化対象の事業が詳細に多種にわたってあります。
準工業地域内に第二種特別工業地区を指定しています。
特徴的な制限では、建築や用途変更を禁止にしているものに、
「原動機を使用する工場で、作業場の床面積の合計が300㎡を超えるもの。ただし、作業場を耐火または準耐火建築物とした印刷、製本などの工場については、500㎡を超えるもの」
があります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり
工業地域内に第一種特別工業地区を指定しています。
制限強化対象の事業が詳細に多種にわたってあります。
建築・用途制限強化 ※既存建築物に対する制限の緩和あり
第一種特別工業地区を指定しています。
制限強化対象の事業が詳細に多種にわたってあります。
第二種特別工業地区を指定しています。
第三種特別工業地区を指定しています。
まとめ
いかがだったでしょうか?
貸工場や売工場、工場用地など、工場系の物件種目をお探しする際に気を付けてもらいたい制限の一つ「特別工業地区」についてと、東京都の各市区町村ごとにその「特別工業地区」の制限の概要をまとめました。
準工業地域や工業地域、工業専用地域に制限強化がある場合に注意が必要です。
特に売買の事例で、作業場面積の制限が強化されている地区の場合に、事前調査でおもったように建物が建たないことがわかったり、査定の方でも使用制限が大きい為、価格をおさえることになるケースがあります。
今回とりあげた「特別工業地区」以外にも、気をつけるべき制限はあります。
その他の特別用途地区や条例、地区計画など行政確認や専門家への確認がたいせつです。
契約後になって、おもったように使えなかったってことの無いように!
その他の首都圏(神奈川県・埼玉県・千葉県)の「特別工業地区」については、東京都とはまた内容が変わってきます。
こちらも注意してください。
この記事を監修しています「立和コーポレーション」は、首都圏の事業不動産を専門に取り扱う不動産会社です。
特に工場系の物件種目については、創業時から主力で取り扱っています。
是非、お気軽にお問い合わせください。
宅地建物取引業 国土交通大臣免許(2)8600号
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